スクラップ業界におけるインボイス制度対応ガイドライン

第2版

2023年2月(9/8一部内容を追加)

 

 社会保障・税の一体改革として、消費税及び地方消費税(以下、消費税)は、2019年10月1日より、現行の8%から10%に引き上げられ、【軽減税率制度】が実施されました。 2023年10月1日から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方法として適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度という。)が導入され、「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」等の保存が仕入税額控除の要件となります。
 金属スクラップ・リサイクル・リユース業界でも対応は異なっており、適切かつ円滑にインボイス制度の対応に向けて、神田重量金属株式会社が運営する「金属リサイクルブログ」やグループ企業にて検討を深めてきました。
 一般向けや企業向けなどの様々な取引における影響や課題を加味しつつ、今回の独自ガイドラインを公開することになりました。

 

 

 この記事は下記の内容構成になります


 ・【本ガイドラインの位置づけ】
 ・【本ガイドラインのポイント】
 ・【第1章】インボイス仕入れ価格にかかるガイドライン
  ≫① 仕入れ価格の消費税に関する事前通知
  ≫② 仕入れ価格にかかる消費税支払い条件の情報開示
  ≫③ 古物営業(再生資源・スクラップ業)の特例措置について
  ≫④ 少額仕入れによる特例措置について
  ≫⑤ 振込手数料に関するインボイス措置
  ≫⑥ 仕入れ先がインボイス番号を持っている場合
  ≫⑦ 仕入れ先がインボイス番号を持っているが、個人として取引を行う場合
  ≫⑧ 仕入れ先がインボイス番号を持たず、金額が大きい場合
 ・【第2章】インボイス仕入れ伝票に関するガイドライン
  ≫① 8%と10%の記載について
  ≫② 伝票自体にお客様のインボイス番号を記載できる仕様が必要になる場合もある
  ≫③ 判取帳で個人インボイスの場合、プライバシー対策が必要になる
  ≫④ 少額仕入れによる特例措置について
  ≫⑤ お客様(相手方)が適格請求事業者でないかを確認する方法
 ・【第3章】インボイス出張買取・引取りに関するガイドライン
  ≫① 一般向けや個人向けの引取りサービスとインボイス
  ≫② 法人・業者様への引取りの際にインボイスは必ず必要
  ≫③ 法人・業者様でインボイスが発行できない業者への引取りは?
 ・お問合せフォーム

 

 

 インボイス制度に関する内容はコチラ

 

【本ガイドラインの位置づけ】 

 このガイドラインは、神田重量金属株式会社を含むグループ各社のガイドラインです。  同業他社などから、内容を共有したいという要望が多かったため、公開資料としてウェブサイトにて公開致します。  社名無しでPDFでのフリーダウンロードも予定しておりますので、お気軽にご利用ください。  ご意見等がございましたら、下記の問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。  

【本ガイドラインのポイント】 

 実際に金属スクラップ業やリサイクルショップなどを運営する業者による実務処理を含めた内容を記載しています。  改定・改正などにより内容に変更はあると思われますが、基本的な内容としては活用頂ける内容となっております。  

【第1章】インボイス仕入れ価格にかかるガイドライン

 

 ① 仕入れ価格の消費税に関する事前通知


本ガイドラインは仕入れ価格に関する事前のお客様とのトラブルの未然防止と迅速な解決のための方策として、仕入れ価格に消費税の有無を事前に伝える必要と消費税を払うために必要な内容を具体的に伝える必要がある。 お客様からの問合せの際や持込があった際に、持込み前や荷下ろし前に事前に伝える必要がある。口頭や現場での都度伝えることが難しい場合、事前に張り紙やウェブサイトなどで通知を出すなど実務的には必要である。

 

 【具体例】
  • 荷受け・荷下ろし・受け入れ前にウェブサイトなどでお客様が確認できる状態により、公平な取引を行う。
  • 宅配買取などの場合、事前に消費税の有無を伝える。
  • 張り紙や通知書面などでお客様が確認できるように努める。

 

 ② 仕入れ価格にかかる消費税支払い条件の情報開示


リサイクル・リユース業者において、お客様へ消費税を支払う場合、支払う条件内容を開示する必要がある。 これは公平な取引を行うことを目的に、お客様が取引条件で不利なことがあってはならないからである。  

 

 ③ 古物営業(再生資源・スクラップ業)の特例措置について


リユース・中古品取扱い業者の場合、インボイス番号を持たない個人・法人からの仕入れは、帳簿保存のみで仕入れ税額控除を受けられるとされています。 ただし、仕入れ先(相手方)がインボイス番号を取得している場合、適格請求書の交付を受け、保存する必要があります。 ※仕入れ先(相手方)は適格請求書を発行する義務があります。  

 

 ④ 少額仕入れによる特例措置について


仕入れ総額が1万円(税込)の場合、帳簿保存による記載のみで良いとされていますが、現在の判断は時限的措置のため、段階的に期限を伝える必要があります。  

 

 ⑤ 振込手数料に関するインボイス措置


通常の再生資源・リサイクル業において、お客様へ支払いを行う場合、振込手数料は自社にて持つ場合が多くなっています。 少額や仕入れ先(相手方)が負担する場合(振込手数料を引く場合)、相手先に適格請求書を発行する必要があります。 これは現行の内容の場合、段階的に必要とされる内容になります。  

 

 ⑥ 仕入れ先がインボイス番号を持っている場合


③でも記載している通り、法人や個人の場合であっても、インボイス番号を取得している場合、仕入れ先は適格請求書の発行義務があります。 ちなみにですが、国税庁のウェブサイトで法人名からインボイス番号を検索するサイトがございます。  

 

 ⑦ 仕入れ先がインボイス番号を持っているが、個人として取引を行う場合


工場や工場など、小規模の事業者などの場合、事業等で不定期に発生するスクラップを従業員様へ権利を譲渡し、売却した金銭を従業員様のジュース代や茶菓子代にする場合があります。 この場合、リサイクル業者・リユース事業者はお客様からインボイス番号を取得する必要が無いとしています。 毎月決まった日程での発生と取引が行われる場合に関しては、インボイス番号が必要であると考えます。  

 

 ⑧ 仕入れ先がインボイス番号を持たず、金額が大きい場合


想定されるシーンは、廃業後の元事業所や資産(スクラップ等)の権利を譲り受けた場合など、個人でその不要物品を処分する際に考えられます。 金額が大きい場合であっても、帳簿保存のみで良いと考えられます。 仕入れ先(相手方)と仕入れ価格を調整する必要もありますが、現在の判断ではインボイス番号は不要となります。

 

【第2章】インボイス仕入れ伝票に関するガイドライン

 

 ① 8%と10%の記載について


金属スクラップの仕入れにおいて、軽減税率が存在しないため、10%の記載しか存在しませんが、現在の趣旨では両方の必要性があります。 下記は一般的な「仕切書」にて必要内容を記載しています。 ※仕切書・納品書・請求書・領収書なども該当します。 

仕入物品 10㎏ 100円 100円
消費税8%     0円
消費税10%     10円
インボイス番号     T-0~
税込合計     110円

 

 ② 伝票自体にお客様のインボイス番号を記載できる仕様が必要になる場合もある


 仕切書などで、お客様から日付・住所・氏名を記載して頂くことは基本ですが、追加事項としてインボイス番号を記載してもらう必要がございます。

 お客様から番号を頂くことは必要ですが、伝票自体に記載して頂く必要があるため、仕切書自体の使用変更が必要になる場合があります。 判取帳などの場合、名前の下に記載して頂くなどの対策が必要と考えます。  

 

 ③ 判取帳で個人インボイスの場合、プライバシー対策が必要になる


 判取帳による記載の場合、通常1ページに他人・他社の記載があるため、必ず他人が見えない状態にするとともに、保管内容についての対策や方針が必要となります。

 特に個人インボイス番号の扱いは、個人情報の取扱と同等に考えるべきであり、重要事項として対策が必要です。  

 また、判取帳へ消費税額の記載が必要になります。

 

 ④ 古物や金属屑とインボイスの帳簿保存


第1章の④でも記載の通り、帳簿保存と古物営業法の商品仕入れに関する保存内容は下記の通りです。

  • 取引年月日
  • 品目・数量・点数・個数
  • 品名や総称
  • お客様(相手方)の屋号
  • 現金受取主の氏名
  • お客様(相手方)の確認方法(一般的に免許証をコピー)

金属スクラップ(再生資源)や古物にて、適格請求書発行事業者ではないお客様より仕入があった場合で、現金出納帳or預金出納帳(帳簿)への記載と総勘定元帳への記載が必要であります。

 

 ⑤ お客様(相手方)が適格請求事業者でないかを確認する方法


お客様が適格請求事業者であるかの確認につきましては、「客観的に明らかにする」という事業者側の対応が必要になります。 記載伝票等にインボイス番号の有り・無しのチェック欄などを設けるなど、事業実態や伝票システムに応じて検討が必要となります。

 

【第3章】インボイス出張買取・引取りに関するガイドライン

 

 ① 一般向けや個人向けの引取りサービスとインボイス


個人や一般の方も金属スクラップやリユース物品の廃棄の際に、出張買取サービスを利用することも増えてきました。 第一章⑦での記載などの場合を除き、個人宅や指定場所などへお伺いする場合など、お客様への確認と客観的に不要であると考えられる場合に限り、インボイス番号の取得は原則不要です。

 

 ② 法人・業者様への引取りの際にインボイスは必ず必要


持込・引取りに関わらず、業者様の場合は原則適格請求書をお客様より発行して頂く必要がございます。 インボイス番号を貰うというのは不十分な前段対応であって、適格請求書を必ず貰うようにしてください。  

 

 ③ 法人・業者様でインボイスが発行できない業者への引取りは?


持込・引取りに関わらず、適作請求事業者ではない場合やインボイス番号が無い場合、法人や業者様などで定期的な取引があるなど、何らかの事情によりインボイス番号の発行が出来ない場合、金額の有無に関わらず10%を買取事業者にて負担する可能性があるため、お客様と相談の上で金額を決定する必要があります。 数量や金額にもよりますが、5%~10%の仕入価格の相談が必要となります。  

 

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    金属リサイクルの専門家として金属スクラップを取り扱う神田氏と山崎氏が解説しています。

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