【後半】水素社会の未来とはCO2を出さない「水素社会」がやってくる
私たちは、日常生活をする中で電気やガス、ガソリンといったエネルギーを消費し、CO2を排出しています。また、家庭から出るゴミも焼却処分の際CO2を出します。
日本では年間で1世帯当たり4,480kgものCO2を排出していることになるとの統計(2017年 温室効果ガスインベントリオフィス全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/))もあります。
人間の活動による大気中のCO2増加が、地球温暖化に影響していることが様々な研究によって明らかにされています。このままでは、異常気象などが起こり地球環境が危険な状態になります。
そこで、各方面でCO2を排出しないエネルギーにチェンジするにはどうしたらいいかが研究されていますが、そのうちの一つの方法が水素をエネルギーにする方法です。
この記事では水素をエネルギーにすることとはどういうことなのか、最新の技術はどこまで進んでいるのかについて解説していきます。
水素社会とは何か
石油や石炭などの化石燃料を使ず、「水素を日常の生活や産業活動で利活用する社会」を「水素社会」と呼んでいます。
水素と酸素が反応する時、電気が発生します。水素と酸素は反応してもCO2は発生しません。また、水素は海水などの形で無尽蔵に存在し、枯渇する心配もないため注目されているのです。
ただ水素を燃料として利用するためには以下のような課題があります。
・水素燃料を作るために電力が使用されるのでその分はCO2排出につながる。
・純水素は非常に爆発しやすいという危険性がある。
・安全に輸送し、安定して供給するための手段が確立されていない。
これらの課題を解決するために現在多くの取り組みがなされています。
水素社会へ取り組みの現状
2003年10月、政府は初めて「エネルギー基本計画」を策定しました。この中に「新エネルギー」として、再生可能エネルギーや水素を視野に入れていくことが書かれていました。
2010年6月の第2次改定では「水素エネルギー社会の実現」というセクションが特別に設けられ、前回に増して水素の有望性が大きくとらえられてきます。
2014年4月に策定された第4次計画では、「水素をエネルギーとして利用する“水素社会”についての包括的な検討を進めるべき時期に差し掛かっている」という記載が盛り込まれ、ますます水素利用が注目されていきます。
そして、2017年12月に「水素基本戦略」が策定されました。これは3つのフェーズに分けて、日本が世界に先駆けて水素社会を加速度的に実現していく計画が描かれています。
最新では、2018年7月にに「第5次エネルギー基本計画」が策定されたところですが、「水素社会実現に向けた取組の抜本強化」という非常に強い表現のセクションになり、国としてますます、この取り組みを強化することになっています。
水素をエネルギーとした各種の機械とは
水素をエネルギーとした発電方法には以下のようなものがあります。
・燃料電池車
水素と酸素の化学反応によって発電した電気でモーターを回して動く自動車類です。すでに実用化が行われており、ホンダとトヨタから発売されています。
・水素発電機
ガスタービン発電の燃料として水素を用いるという方法です。現在天然ガスと水素の混焼方式の開発が進められており、実証実験が行われています。
・家庭用・業務用燃料電池
都市ガスを使って水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて発電し、同時に発生する熱で給湯まで行う仕組みです。すでに商品化されています。
水素の供給はどうするのか
水素の製造方法としては、大きく分けると石油製品から水素だけを分離する方法と水を電気分解する方法とがあります。現在は圧倒的に石油製品から分離する方法による製造方法の方が多く、CO2排出量は減らすことができるとはいえ、未だ化石燃料に頼らざるを得ないという課題を抱えています。
また、水を電気分解する方法でも太陽光や風力、水力など自然エネルギーによる発電が使われるようにしているものの、今後広く普及するためには制約が多そうです。
出来た水素を運搬する方法も難題を多く抱えています。天然ガスと同じエネルギー量を出す水素の量は3倍。どうやって高濃度に圧縮して運搬するかが大きな課題になっています。
高圧ガス、液化水素、有機ハイドライド、パイプライン、貯蔵する技術など様々な手法が検討されています。
2050年の「ゼロカーボン」目標に向けて
平成30年7月に示された第5次エネルギー基本計画では、2030年までに温室効果ガスの削減を2013年度比で26%削減する目標が立てられました。
その手段として「エネルギーミックスの確実な実現」ということが言われており、その中に今回から水素エネルギーも加わった形になっています。
待ったなしで進む地球温暖化対策。国を挙げた水素社会の実現計画は急ピッチで動き出しています。今後どうなっていくのか注目していきたいところです。
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