金属買取業者の開業の仕方

~現場経験者が語る、ゼロから始めるスクラップビジネス~

 

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 金属スクラップ業者を開業するために必要な事、開業してからのこと考える事。

 「金属スクラップの買取業者を始めたいが、何から手を付ければいいのか分からない」
 これは実際に多くの方からいただく相談です。
 市場としては常に一定のニーズがあり、参入ハードルも比較的低い分野ですが、許可や設備、法令対応など“見えにくい落とし穴”も多く存在します。
 この記事では、”実際に業界で買取・加工・販売を経験してきた立場から、「金属買取業を始めるためのステップと注意点」”を解説していきます。

 

 

銅相場、銅建値、スクラップ買取、神田重量金属株式会社、非鉄金属リサイクルブログ

 

 まず最初に理解すべきこと「取り扱うスクラップは決めた方がいい?」


 基本的に取り扱うアイテムを決める必要はありません。

 ただし、開業後に安定してから得意なアイテムや頻繁に納品されるアイテムに対して特化していくことが必要になる場合があります。

 ※店舗(ヤード)の規模により、ある程度絞る必要もあります。

 金属買取業は「古物商+α」の複合ビジネス

 金属スクラップ買取業は、一般に「古物営業法」の適用を受ける業種です。 

 さらに、品目によっては「産業廃棄物処理業」や「金属くず業許可」などの法的な制限も関わってきます。 

参考内容

「どんなものを」「誰から」「どうやって」買うのか――ここを明確にするのが最初の一歩です。

 

開業までの具体的なステップ

 

 ステップ①|事業計画と扱う品目の決定

  • どの金属を扱うか(鉄?非鉄金属?雑品屑?)

  • 集荷型か、持ち込み型か

  • 顧客は法人か個人か

  • 加工や保管設備を持つかどうか

 事業スタイルによって必要な設備や許認可が大きく異なります。

 

 ステップ②|必要な許可の取得

 古物商許可(必須)
  • 管轄の警察署経由で申請

  • 法人でも個人でも申請可能

  • 標準処理期間:約40日

  • 手数料:19,000円前後

 金属くず業許可(自治体による)
  • 主に鉄を扱う場合に必要(特に加工を伴う場合)

  • 都道府県・市区町村によって制度が異なる

 使用済み金属の許可(自治体による)
  • 主に金属を含む家電を一定数以上保管する(屋内も含む)

  • 都道府県ごとの申請が必要

 産業廃棄物収集運搬業許可(任意だが重要)
  • 産廃業者や工場相手に取引するにはほぼ必須

  • 許可取得には講習受講が必要

  • 都道府県ごとの申請が必要

 

 ≫許認可についての記事はコチラ

 

 ステップ③|営業所・ヤードの整備

  • 計量器(トラックスケールや台秤)※250~500万、メーカーや工事内容による

  • 保管場所(屋外OKだが周囲配慮必須)※100坪の壁工事で100万、自身で工事なら3割ほどで可能

  • フォークリフトやユンボ(小規模でも重宝)※新品・サイズにもよるが、中古で最低サイズでもユンボ250万、リフト80万

  • 防犯カメラ・看板(古物営業に必要)※警備会社だとリースで月3万ほど、安いものを買って自分で設置なら3万未満

 都市部では騒音や景観の面でハードルが高いため、郊外・工業団地の一角などがスタートには理想的です。

 必要な設備は?

 一部は上記で記載していますが、それ以外の設備を金額も併せて記載します。

  1. 【吊り秤】クレーンやリフト、支えになる場所があれば引っ掛けることで計量が可能です。
    ・金額はピンキリですが、5万~30万ほどで購入可能です。
     
  2. 【剥線機】太い線を剥いたりするもので、電線に付加価値をつけることができます。
    ・金額はピンキリで、10万~100万ほどで購入できます。
  3. 【分析器】これはかなりお金に余裕がある場合や、特殊金属を取り扱う場合に必要です。
    ・金額は100万から1,000万近いものまで様々です。
  4. 【コンテナ】スクラップを入れるコンテナです。これも数を揃えるとかなりの費用になります。
    金額は3立米サイズで10万~15万ほどです。
  5. 【車両・トラック】引取りや出荷に使用する目的の設備です。引取りのみなら軽トラか2トン車両、出荷なら4トン車両、できれば4トン車両と軽トラが理想かもしれません。
    金額は中古だと軽トラで15万ほど、2トン車両は50~80万、4トン車両は100~300万、年式や設備付きなどでかなり変わります。

 細かい道具・工具・什器などは、営業していると意外と入荷することも多いので初めからきっちりしたい場合を除けば抑えることができます

 

 必要な資金は?

 規模にも寄りますが、ご自身で上記の情報から計算してみてください。 

 参考程度にですが、神田重量金属の前社長は体重計と3万円と建設業者の敷地を間借りして始められたそうです。

 佐野重量金属の前社長は最初に30万円ほどで、家賃5万円、設備なし、看板は段ボールで自作で始められたそうです。

 一般的には集荷業者で開業して20万円ほどの中古軽トラックと50万程度の最低運転資金は必要だと考えます。

 細かい道具などは営業しているうちに意外とスクラップとして入ってきます

 

 ステップ④|販路と相場の把握


 買取した金属は、以下のようなルートで売却されます。

  • 中間業者(問屋) :地元の再生業者へまとめ売り。相場変動に敏感。
  • 仲間売り・同業者 :大規模な集荷ヤードへ小ロット・複数ロット売却。
  • 製錬会社・メーカー:まとまったロットでの直接取引。信用力が必要。
  •  海外輸出業者  :コンテナ単位で取引。法令遵守に厳格な管理が求められる。

 買取価格設定のために、常に市況(LME・為替)を追いかける習慣も重要です。 

 ≫ネットで買取価格調べる方法

 

 集客と信頼構築の方法


 ホームページ・SNSでの情報発信は必須!
  • 「何を買い取っているか」が明確に伝わるWEBサイト

  • 営業時間・アクセス・持込方法などの詳細を記載

  • 実績やビフォーアフター写真、ヤードの雰囲気などを載せると信頼性アップ

 特に法人案件では、WEBでの第一印象が問い合わせの有無を左右します 

 営業をかける場所も合わせて大事!

 自動車整備工場、バイクや自転車整備工場、電気や水道の設備業者、建設業者、などですね。

 工場や大きな会社は開業したばかりだと知名度や信用がないためツテがないと難しいかもしれません。

 

 よくある落とし穴と回避策


  • 許可が足りないまま営業してしまう:必ず管轄行政に事前相談を
  • 契約先が倒産・未払い:取引先の与信管理を徹底
  • 計量・素材判定でトラブル:客前で計量・明細提示を習慣に

 

 鉄屑屋・非鉄屋・雑品屋の違い


 短所や長所も合わせて説明します。

 ●鉄屑屋

 その名の通り鉄屑をベースにしており、さらに細かく分けると

 【ギロチンヤード】【集荷ヤード】分類され

 ギロチンヤード(問屋)ではその名の通りギロチン加工をするために、数千万、数億の機械や広大な敷地、設備、など必要になります。

 たとえば、敷地3000坪、重機コンマ7を2台、ギロチン(小さめ)トラックスケール等、くらいだと軽く4~6億ほどかかりますので、オススメはしません。 

 集荷ヤードについてはギロチンなどの設備や広大な敷地は必要としていません。

 都市部でのスマートヤードにも適応します。ただし、最低限重機やトラックスケールは必要ですので、少し費用はかかります。

 一概には言えませんが、中古で上手くやれば1,000万未満で可能です。 

 ●非鉄屋

 その名の通り非鉄金属を取り扱うスクラップ業者です。

 トラックスケールはあると便利ですが、初めは台秤(10万~50万)ほどで購入できます。

 重機もあると便利ですが、中古のミニユンボや中古のリフトでも可能です。

 ●雑品屋とは?

 雑品屋はある意味全てのスクラップをメインにします。(コンビニみたいなもの) 

 大きく鉄屑屋、非鉄屋と違うのは取扱品目に【貿易商品】【生き商品】が含まれます。

 ミシンや楽器、OA機器・農機具・など取扱は膨大ですが、必要な設備に関しては非鉄屋と同じになります。

 

 回収専門業者・ヤード荷受け業者


 上記で三つに分類しましたが、ヤード荷受けをしない回収【出張買取)を専門にする業者もいます。

 基本的に鉄を回収するという業者は少ないです。理由は単価が低い、積載効率が悪い、などがあります。

 基本的には非鉄金属か雑品などを回収する業者が多く、利益単価が高いことが要因です。

 ちなみにですが、廃品回収業者と集荷業者の違いについては別記事で記載しています。

 

 集荷業者・集荷業務でもっとも積載効率がいいのはバッテリーだと言われていますので、
 バッテリー買取業者の記事も記載しておきます。

詳しく見る

 

 ちなみに、よく産廃の許可や一般廃棄物の許認可が必要など言う方がいますが、お金を頂いて廃棄物を運ぶのは違う業種になりますので、よく確認してください。 

 ≫廃棄物の記事はコチラ

 

 スクラップ屋として必要な3つの要素


 要素1【絶対に無料でスクラップをもらうのはやめよう】

 一見利益があがり、お客様が納得してくれてるならいいのでは?という意見もありますが、買取業者でいるためにプライド的な意味も無いとは言えません。

 必ず1円でもいいので支払いましょう。受け取らない場合は、ジュースなどを渡すのもいいかもしれません。

 要素2【お客様との信頼関係の構築とコミュニケーション】

 お客様との信頼関係は必ず大事にしましょう。当たり前のように聞こえますが、誠意をもって計量をすることや検収を誤魔化さないなど、私はこの業界まだ3年ですが、驚くほどそういう話を聞くことが多いです。ばれてないと思っていても、気づく人もいるんですよ。 

 要素3【お客様が儲けてもらうのが金属スクラップ業者の本業である】

 多くの発生する会社や個人のお客様は、金属スクラップを売り払って商売をしているわけではありません。

 あくまで本業の発生ロスや不要になった材料をスクラップダウンという形で私たちスクラップ業者に出して頂けています。

 ある意味、本業でお客様が儲けてもらうために金属スクラップ業者としてできることを追求すれば、自然と利益が上がります。(と言ってました)

 

まとめ|“なんとなく始める”と続かない

 金属買取業は利益率が高い反面、信頼・許可・相場変動への対応力が求められる世界です。
 しっかりと準備をしてスタートすれば、地元に根付き、長く続けられる安定した事業になります。
 少しでもこれから金属スクラップ業者を開業される方の参考になればと思います。

 

 【おまけ内容】スクラップを貯める方がいいのか、貯めない方がいいのか


 意見が分かれるところではあります。無限のお金と無限の敷地がある場合、尚且つ仕事ではなくギャンブルをしたい方は貯めるといいでしょう。

 スクラップの相場に絶対はありません。ただし絶対に近いのは”その日の相場”だけです。

 その日に買ったものをその日に売れば基本的には必ず利益はでます。

 相場に自信をもって在庫をされる場合、見えない経費がたくさんかかっているので、その点も注意が必要です。

 似た話で【ビス無しアルミサッシ】の検収は赤字になる!?という話があり、そのうちブログに記載します。

 

 

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  この記事について(著者情報)

 金属リサイクルの専門家として金属スクラップを取り扱う神田氏と山崎氏が解説しています。

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