ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)
ヘルスケアや就労支援、教育など、複雑な社会課題を解決へと導くソーシャル・インパクト・ボンド。新しい行政の取り組みとして注目されています。
本記事では、ソーシャル・インパクト・ボンドについての概要と、国内事例について分かりやすく解説します。
この記事は下記の内容構成になります
・ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)とは
・SIBの必要性
≫SIBの現状
・日本国内での事例
≫がん検診受診率向上
≫認知症予防で生活の質を向上
≫引きこもりの若者への就労支援
≫その他の事例
・SIBの今後の課題
・SIBについてのまとめ
ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)とは、地方自治体が抱えている社会課題を民間企業に委託し、達成された課題に対して報酬が支払われるという官民連携の社会実験です。
通常、社会的な課題を解決するには数年かかります。一般的な民間企業は解決の目途が立っていない事業に多額の出資をするのは困難でしょう。課題が解決する保証はなく、損失のリスクを負えないからです。
そこで資金を、社会的課題を解決するのに意欲的な投資家から調達するのがSIBです。課題が達成または改善されたときに、成果報酬として元本に加えてリターンを得られます。目標が大きく上回ったら利益が上乗せされるため、課題解決への意欲も高まるわけです。
このように、民間企業が主体となって活動することで、行政コストの削減も見込めます。精度を上げるために官民が協力し、解決の見込みのある課題を精査することが必要です。
SIBの必要性と現状
SIBは、サービスを提供した後に第三者が評価し、成果を可視化します。行政が行う税金を使った事業と違い、民間の出資者からの資金提供により成り立ちますので、成果(結果)にこだわったプランです。これにより行政サービスの質が上がり、同時に住民の満足度も上がります。
SIBは社会課題解決を目的としていますので、成果がなければ意味がありません。このような理由から行政の経費を最小限に抑えつつ社会課題を解決するためには、SIBの導入が必要なのです。
SIBの現状
日本では2015年に始まり、2017年から本格的に導入されました。2019年2月時点で日本での事例は3件です。世界全体で見るとイギリスが全体の36%を占める47件、次いでアメリカ26件、オランダ11件と続きます。
世界のSIBで取り組まれている分野別で見ると就労支援が一番多く、生活困窮者救済、ヘルスケアの順に多い特徴があります。
日本でのSIBは、ヘルスケアが中心です。地方公共団体が単独で取り組んだり、複数で連携して取り組んだりします。
日本国内での事例
では、実際日本ではどのような事例があるのでしょうか。
ここでは具体例をご紹介します。
がん検診受診率向上
広島県の大腸がん検診受診推奨を行う事業です。広島県内6自治体(尾道市、庄原市、竹原市、福山市、府中市、三次市)の国民健康保険者を中心に、がんの早期発見による健康寿命を延ばすこと、生活の質を向上することを目的としています。
認知症予防で生活の質を向上
認知症予防事業を展開した7つの自治体の事例があります。事業に関わったのは福岡県の4つの都市(福岡市、大川市、うきは市、宗像市)と熊本県熊本市、奈良県天理市、長野県松本市です。
実証実験は、要介護認定を受けた100名と要介護認定を受けていない65歳以上約300名を対象としています。認知機能やコミュニケーション機能を改善することや、脳の健康についてのノウハウと実績をもつ民間企業が主体となって実施されました。
引きこもりの若者への就労支援
兵庫県尼崎市による就労支援事業です。支援の申し出をしない引きこもりの若者を対象に、積極的な支援を働きかける就労支援について、認定NPO法人により実施されました。
内容は、就労支援に至っていない若者に対し、NPO法人の訪問支援員と市のケースワーカーが協働で就労支援プログラムへの参加を促すものです。
年間200名を対象にし、6名が就労、4名の就労可能性が向上することを目指しました。
その他の事例
SIBの事例として日本国内での事例で1番多いヘルスケアに続き、認知症予防、就労支援、児童養護やコミュニティビジネス起業支援など、さまざまな事業に取り組まれています。
このようにそれぞれの課題に取り組み、成果を出すことで、対象者・関係者の生活の質の向上や社会的コスト削減が期待できるのです。
SIBの今後の課題
各自治体がSIB事業をゼロから作り上げるのは簡単なことではありません。よって、SIB構築の際のマーケット調査やその他専門的なことについては、それらの専門機関を活用する必要があります。事業展開に向けて円滑で効率的な準備は必須です。
また、各自治体は「成果報酬型」の事業になじみがないため、自治体内部におけるSIBの勉強会やセミナーなどで知識を高めることが重要です。出資者への損失リスクをできるだけ下げるための事業プランを考え、さらにサービスを受ける住民の満足度の向上を追及するなどの努力が必要でしょう。全員が満足できる事業を展開するには、常に知識と情報を更新していかなければならないのです。
SIBについてのまとめ
ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の概要や国内事例をご紹介しました。
日本もSIBを活用し、官民協働で社会課題を解決していかなければなりません。
民間企業がSIBに取り組むことで新たな事業展開につながるだけでなく、もっと広い目で見るとSDG’sの達成にも大きく貢献できるでしょう。
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