【前編】不法投棄とは?過去の不法投棄事件のまとめと解説
日本では、廃棄物の不法投棄は法律で固く禁じられています。にもかかわらず、人目のつきにくい山中や空き地などで、不法投棄された廃棄物を見たことがありませんか?
近年、不法投棄されるごみが産業廃棄物や家電など多種多様化しており、悪質な案件が増えています。不法投棄を野放しにしてはいけません。不法投棄は環境破壊や住民の健康被害を引き起こすきっかけになるからです。
本記事では、1988年から2004年までの不法投棄事件についての概要を解説します。
この記事は下記の内容構成になります
・不法投棄とは?
・1988年から2004年までの不法投棄事件について解説
≫新河岸川不法投棄事件(1988年)
≫豊島不法投棄事件(1990年)
≫青森・岩手県境不法投棄事件(1998年)
≫岐阜市椿洞・善商不法投棄事件(2004年)
≫四日市市不法投棄事件(2005年)
・1988年から2005年までの不法投棄事件についてのまとめ
不法投棄とは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」に違反した処分方法で廃棄物を投棄することです。同法は昭和45年に公布されましたが、現在でも不法投棄は後を絶ちません。同法に違反すると懲役刑や罰金刑があります。
1988年から2005年の不法投棄事件の概要
ここでは、1988年から2004年までに起こった不法投棄事件について解説します。
事件の概要を知ることで、地球環境保護について改めて考える機会になれば幸いです。
新河岸川不法投棄事件(1988年)
新河岸川不法投棄事件は、新河岸川河川改修工事のため埼玉県が買収した土地(埼玉県朝霞市上内間木地内)に、不法投棄された大量のドラム缶が埋められていることが判明した事件です。埼玉県によると、ドラム缶が見つかったのは1988年。調査の結果、ドラム缶の廃液には毒性の強いPCBをはじめ、重金属等の有害物質が含まれていました。
1990年には周囲を鋼材で囲み、土壌汚染拡大を防止するための応急措置をしています。1996年からは掘削時の安全確保および埋設物の中の揮発性有機溶剤の除去を目的として、土壌ガス吸引作業を実施しました。
その後、新河岸川に不法投棄された産業廃棄物を無害化するために、専門家の意見を聞きながら検討を重ねています。
豊島不法投棄事件(1990年)
豊島不法投棄事件は、香川県小豆島に隣接する「豊島(てしま)」という島で起こった不法投棄事件です。自然豊かな島が不法投棄によって汚染され続けました。
事の発端は1975年、「豊島総合観光開発株式会社(豊島観光)」が香川県に対し、有害廃棄物処理場建設の申請をおこなったことがきっかけです。以前から豊島観光は違法な埋め立てなどを繰り返していたため、住民がただちに反対運動を起こしました。その後、申請した処分許可内容を変更することで許可が下りたのですが、そこから島は「ゴミの島」となっていくのです。
それから約10年間、不法投棄が続けられた結果、住民が健康被害を受けるなど深刻な問題も出てきました。1990年にようやく兵庫県警が業者を摘発、1991年に有罪判決が下されています。
しかし2021年4月時点でも原状回復の作業は続いています。安易におこなった不法投棄があらゆる生命体の命を破壊し、それらの回復には困難を極めるということがよくわかる事例です。
青森・岩手県境不法投棄事件(1998年)
青森・岩手県境不法投棄事件は、三栄化学工業株式会社(三栄化学)が長期間にわたり、青森県田子町と岩手県二戸市の県境にある同社代表者の私有地である27ヘクタールの原野に、産業廃棄物を不法投棄した事件です。
不法投棄された廃棄物の多くは堆肥、焼却灰、汚泥、廃油入りドラム缶などで、さまざまな有害物質が混合されて広範囲に埋められていました。
青森県側は谷に投棄したあと覆土、岩手県側は地面を掘削し投棄、そのあと覆土することが繰り返されていたのです。
事件としての発覚後は、不法投棄廃棄物の撤去や汚染された土壌や地下水の拡散防止対策を講じました。廃棄物が不適正な処分をされないように監視する体制も作っています。
岐阜市椿洞・善商不法投棄事件(2004年)
岐阜市椿洞・善商不法投棄事件は、岐阜県岐阜市の「椿洞(つばきぼら)」という地域で起こった不法投棄事件です。
「善商」という会社が産業廃棄物を廃棄していた岐阜市椿洞で、ゴミの中から白煙が出たことがきっかけで発覚しました。岐阜市が、採取したガスを調査した結果、高濃度の水素や一酸化炭素、ダイオキシンが成分に含まれていたのです。周辺の環境に悪影響を及ぼさないような撤去方法を検討する必要がありました。
2013年、有害廃棄物の撤去が終わり安全な状態にまで整地が終わったということで、岐阜市が終息宣言を行いました。すべての問題が完全に解決したとはいえませんが、ひとまず周辺住民が安全に暮らせるようになったことは大きな進歩です。
四日市市不法投棄事件(2005年)
四日市市不法投棄事件は、三重県四日市市の郊外で起こった不法投棄事件です。産業廃棄物の処分については、川越建材興業が三重県から許可を得ていました。しかし許可が下りた場所以外にも投棄していると住民から苦情があり、調査した結果、許容量を超えていることが判明したのです。
県は業者に、廃棄物の飛散防止や汚水の流出防止対策をするよう命じましたが、期日までに応じませんでした。指導だけを繰り返しても不適正処理が是正されないことが多いため、行政と警察が連携し、強制的に是正させる必要があります。
廃棄物全部を撤去するという住民の希望を配慮し、2007年に県は業者に対して2008年を期限とした措置命令を出しました。
1988年から2005年までの不法投棄事件まとめ
1988年から2005年までの不法投棄事件について解説しました。
廃棄物を投棄するのは一瞬ですが、汚染された環境を元に戻すのは数十年、場合によってはそれ以上の時間を要することがあります。全員がルールを守って住みやすい環境を維持していきたいものです。
後編は、2006年から2021年までの不法投棄事件と、不法投棄をするとどんな罰則があるのか、また、環境への影響などにも触れていきます。
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