錫【特殊金属】とは?
電子部品から給湯器、はんだ付けまで。
現場では一見地味ながら、錫(スズ)は意外と幅広い用途で使われており、そのスクラップにも一定の需要があります。
この記事では、金属リサイクルの視点から「錫スクラップ」の基礎知識、種類、そして注意点について解説します。
スクラップの買取価格、滋賀県金属買取の神田重量金属株式会社.jpg)
錫(スズ)スクラップ
錫の特性として代表されるのは酸化しにくく、錆びにくいという安定した金属で、ベースメタル・コモンメタル(普遍の金属)とも呼ばれています。
銅や鉄などの金属と違い、メッキなどが無い状態でも色の変化が少なく、美しい光沢(ザラザラした銀色)を保ちます。
錫(Sn)は、柔らかくて加工しやすく、耐食性に優れる金属です。
融点は約232℃と低めで、主にはんだ材料として使われるほか、ブリキ(鉄板にスズをメッキしたもの)や”錫器(すずき)”と呼ばれる食器・酒器にも利用されてきました。原理は錆びにくい特性から金属特有の有害物質などが解けないため、安全な素材であり、抗菌作用があります。原理的には金属イオンが微生物や細菌に触れることにより死滅させるなど、様々な説はございます。
近年では、鉛フリーはんだの主成分としても脚光を浴びています。
錫には毒性があるって本当?
錫(Sn)の単体製品であれば人体に大きな影響はありませんが、類似金属で鉛(Pb)という金属の毒性があります。
純粋な錫合金ではなく、鉛等が含まれている場合、様々な人体への影響があり、日本産業の歴史においても問題となっています。
現在の製品では鉛フリーが一般的となっており、毒性が問題になる製品はありません。
錫の科学的特性まとめ
-
融点 :232(第14族元素で最も低い)
-
超伝導:超伝導の移転温度は3.72K
-
常温 :圧延性に優れている
錫が使われている製品
錫スクラップは、その発生源によっていくつかのタイプに分かれます。以下は、現場でよく見かける代表的なものです。
【はんだスクラップ】
- 代表機種:リール状の未使用はんだ、不良はんだ、はんだごて先のカス
- 特徴:錫が主成分で、鉛入り・鉛フリーの区別が必要
- 注意点:見た目が似ていても成分が異なることがあるため、分析や試験溶解が必要
【錫メッキスクラップ】
- 代表機種:ブリキ缶、メッキ銅線、錫引き端子
- 特徴:鉄や銅などの母材の上に錫が薄くメッキされている
- 注意点:錫の含有量が少なく、スクラップとしての価値は限定的。あくまで“付加価値”として評価
【錫インゴット・スラッジ】
- 代表機種:製造過程で出る錫のスラッジ、溶解残渣
- 特徴:比較的純度が高く、再資源化しやすい
- 注意点:酸化・混入物の有無により価格が変動しやすい
【その他錫製品】
- ハンダ、ロウ
- パイプオルガンのパイプ
- 活字合金
- 食器や花器、工芸品
- 液晶ディスプレイや有機EL
錫の合金
※ハンダも厳密にいえば合金である。
【ホワイトメタル】
錫、亜鉛、鉛、アルミ、アンチモンなど融点の低い金属による軸受け合金
【バビットメタル】
軸受け合金で使用されており、銅とアンチモンの合金です。
【ウッドメタル】
ビスマスを中心に錫や鉛、カドミウムが含まれた融点70℃の合金です。
錫の産出量と国別一覧
錫石(すずいし)などに含まれており、加工のしやすさに特性を持ちます。
錫鉱石物の中でも錫石が半分以上を占めており、主にアジアを中心に産出されています。
2006年時点:リンク
産出量 |
埋蔵量 |
1.インドネシア | 1.中国 |
2.中国 | 2.マレーシア |
3.ペルー | 3.ペルー |
4.ボリビア | 4.インドネシア |
5.ブラジル | 5.ブラジル |
錫スクラップのリサイクル事情
錫は非鉄金属の中でも比較的高価な部類に入り、特に高純度はんだスクラップはリサイクル価値が高いです。一方、メッキスクラップなど錫含有量が低いものは、単体としてよりも他の金属と一緒に回収・処理されるケースが多いです。
錫の回収は環境保護の観点からも重要です。特に、鉛入りはんだとの分別や電子部品の脱錫処理など、適切な処理が求められるため、専門知識があるリサイクル業者への持ち込みが推奨されます。
錫のスクラップとしての価値
一般的に発生する錫のスクラップは、ハンダやボール状の場合が多く、純粋な錫であることは少ないです。
合金など錫が〇%含有しているといった場合でも買取価格は高いですが、成分分析が必要となる為、通常のスクラップ検収と違い時間がかかる場合もあります。
現場からのワンポイント
金属リサイクルの現場で「これ、錫じゃないか?」という問い合わせは意外と多いものの、他金属との判別が難しいケースが大半です。見た目や重量感、加工跡だけでは判断しきれないため、目視+成分分析が基本になります。
また、スズの価格は相場変動が大きく、鉛や銅に比べて流通量が少ないため、売却や査定のタイミングにも注意が必要です。
錫(スズ)スクラップのまとめ
錫スクラップは、一見ニッチなようでいて、電子機器や配線、ブリキ缶など多くの製品に潜んでいます。
リサイクルの際は、成分の確認と分別が命。しっかり見極めて、無駄なく価値を引き出しましょう。
特殊金属スクラップ一覧
特殊金属・レアメタルは基本的に金属元素
発生が少なく一般的に見かけることの少ない特殊金属は、見た目での判別も難しいため、専門のスタッフによる検収が必要になります。最近では精度は低いですが、機械による金属の選別機(選別ガン)などもあるため、それを活用すればある程度判別が可能となっています。
※選別を行う選別ガンは様々な種類がありますが、一般的な物は精度が低いためお気を付けください。
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金属リサイクルの専門家として金属スクラップを取り扱う神田氏と山崎氏が解説しています。