ブラックマス(電池原料)の概要とリサイクル
充電電池のリサイクル
ブラックマス(電池材料)とは、リチウムイオン電池に使用される非鉄金属が含まれた原料の事を指します。
コバルト・ニッケルなどの特殊金属(レアメタル)からリチウム・アルミニウム・マンガン・鉄などベースメタルを中心に構成されたものが正極材と負極材に使用されています。
使用済みのリチウムイオン電池を無害化処理して、破砕・焼却することで行われます。この過程で、正極や負極の材料が混ざった黒い粉が得られ、これがブラックマスです。
ブラックマスのリサイクル技術は、リチウムイオン電池のサプライチェーンにおいて環境的にも経済的にも重要な役割を果たします。
ブラックマスの精製方法と再利用方法
湿式製錬 | ◆ブラックマスを水や酸などの溶液に溶かして、金属イオンを抽出する方法です。 この方法では、リチウムやコバルト、ニッケルなどの金属を個別に分離・精製することができます。 |
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乾式製錬 | ◆ブラックマスを高温で溶融して、金属を分離する方法です。 この方法では、コバルトやニッケルなどの高価な金属を回収することができますが、リチウムやグラファイトなどの低価な材料は失われます。 |
ダイレクトリサイクル | ◆ブラックマスから正極材料をそのまま取り出して、再利用する方法です(アップサイクルに近い)。 この方法では、ブラックマスを高温高圧の水や酸化剤で処理して、不純物を分離することで、正極材料(NMC)を回収することができます。 |
以上のように、ブラックマスの精製方法と再利用方法は様々ですが、それぞれにメリットとデメリットがあります。最適な方法は、電池の種類や組成、市場の需要などによって変わるかもしれません。
ブラックマスのリサイクル事業とは?
ブラックマスをリサイクルすることで、リチウムやコバルト、ニッケルなどの貴重な金属を回収し、新しい電池材料や合金などに再利用することができます。これは、資源の有効利用や環境負荷の低減に貢献するとともに、電池材料の安定供給やコスト削減にもつながります。
ブラックマスのリサイクル事業は、国内外で多くの企業や研究機関が参入しており、競争が激化しています。
特に、ブラックマスから正極材料をそのまま取り出して再利用するダイレクトリサイクル技術は、高い付加価値や効率性を持つとして注目されています。
電気自動車やエネルギー貯蔵システムなどの需要増加に伴って、今後も拡大する見込みです。
しかし、リサイクル技術の開発や普及には、技術的・経済的・法的・社会的な課題があります。
例えば、電池の回収率や品質管理、コスト競争力や規制対応、消費者の意識や信頼などです。
以上のように、ブラックマスのリサイクル事業は、多くの可能性と課題を抱えている分野です。
ブラックマスのリサイクル技術の開発状況について
日本でも大手企業などが共同で、ブラックマスに含まれるリチウム、コバルト、ニッケルを回収・精製する湿式製錬技術の開発に着手しました。
ブラックマスを溶解し、金属イオンを選択的に抽出することで、高純度の金属塩を得るものです。
以前にもNHKは、リチウムイオン電池のリサイクル技術に関する特集番組を放送しました。
その中で、ブラックマスから正極材料をそのまま取り出して再利用するダイレクトリサイクル技術や、ブラックマスを高温で溶かして金属を分離するピロメタルルギー技術などが紹介されました。
【精錬技術の豆知識】ピロメタルルギー技術は、金属の抽出や精製に用いられる技術の一つです。通常、鉱石に含まれる金属は、高温で加熱されることで酸化物に変換されます。その後、還元剤によって金属を抽出することができます。しかし、ピロメタルルギー技術では、金属を含む鉱石を高温で加熱することで、金属が自己還元反応を起こして抽出される方法が使われます。
この技術は、鉄やニッケルなどの金属の製錬に広く用いられています。高温で加熱されることで金属が抽出されるため、非常にエネルギーを消費することが欠点の一つです。
また、この方法で得られる金属は純度が高いため、高品質の製品を作ることができます。
ブラックマスのスクラップとしての価値
日本国内でブラックマスの発生はかなり限定的となっており、通常の発生はほとんど無いと思われます。
特殊金属・ミックスレアメタルとして価値が高いものとなっており、今後発生は多くなってきます。
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