使用済み有害機器について
家庭や工場から出る廃棄物の中には、見た目では分かりにくい“有害性”を持った機器が含まれています。これらは「使用済み有害機器」と呼ばれ、リサイクルや廃棄の際に特別な対応が必要です。
近年、有害物質を含む使用済みの電気電子機器等がその他の金属スクラップ等と混合された状態(いわゆる雑品スクラップ)の保管又は処分が、環境保全措置が十分に講じられないまま行われることにより、国内における火災の発生を含めた生活環境保全上の支障が指摘されています。
今回は、金属リサイクルの現場で実際に直面する使用済み有害機器の種類や注意点、そして正しい取り扱いについて解説します。

使用済み有害機器とは
簡単に言えば、「有害物質を含む、使用済みの機械や電気製品」のことです。
これには以下のようなものが含まれます。
これらは一般の金属スクラップと違い、”法律に基づいた処理や申請が必要な「特定品目」”に分類されることがあります。
なぜ問題なのか?有害機器がもたらす3つのリスク
1. 環境リスク
有害物質が流出すれば、土壌や地下水、大気に深刻な汚染を引き起こします。特にフロンやPCB、水銀は微量でも強い影響を与えるため、厳重な管理が求められます。
2. 作業者の健康リスク
適切な知識や装備なしで解体・取り扱いをすると、作業員の健康を害する危険があります。特に吸引・皮膚接触による慢性中毒リスクは現場でも深刻です。
3. 法律違反のリスク
不適切な処理を行った場合、「廃棄物処理法」「フロン排出抑制法」「PCB特措法」など複数の法令に違反する可能性があります。企業責任が問われ、行政指導・罰則の対象にもなります。
使用済み有害機器の正しい対応方法
- 仕分け :有害物含有の可能性がある機器を分別 |外観・型式・年式で判別可能な場合も
- 分解・除去:有害部分を取り外す(専門業者対応) |フロン・PCB・水銀などは外注処理が基本
- 法的処理 :処理委託や申請を行う |収集運搬・処分の許可業者に依頼
- 記録の保管:マニフェストやフロン処理証明書を保管|トレーサビリティ確保のため必須
日本における廃棄物処理法に関する概略
これを踏まえ、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)が平成29年6月に改正され、使用を終了し、収集された機器(廃棄物を除く。)のうち、その一部が原材料として相当程度の価値を有し、かつ、適正でない保管が行われた場合に人の健康又は生活環境に係る被害を生じるおそれがあるものとして、政令で定めるもの(有害使用済機器)の保管又は処分を業とする者(適正な有害使用済機器の保管を行うことができるものとして環境省令で定める者を除く。)に対して、都道府県知事等への届出、処理基準の遵守等を義務付ける制度(有害使用済機器保管等届出制度)が新設され、平成30年4月から施行されました。
許認可の取得方法について
基本的には事業所を設置する行政(市役所)への届け出を行い、要件等を満たす調査を経て許認可が交付されます。
要件等につきましては、都道府県ごとの条例により異なる場合がございますので、今回は割愛させて頂きます。
但し、共通する基本要件は下記の通りです。
・表示板(保管内容の表示看板)の設置
・保管場所に雨等の影響が受けない設備の設置
・分離層や土間コンクリート打設工事
参考リンク:環境省Q&Aはコチラ
環境省のページを見る
リサイクル業者が現場で注意すべきポイント
-
「これは金属に見えるが…本当に安全か?」と疑う視点が重要
-
年式が古い機器ほど、PCBや水銀の含有リスクが高い
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法令改正(例:フロン排出抑制法)には常に最新情報で対応
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業務用機器は、所有者責任の明確化と処理履歴の記録が不可欠
金属としては価値があるが、扱い方に要注意
使用済み有害機器の多くは、構造体としては鉄やアルミ、銅などを含む高価な素材で構成されています。
だからこそ、スクラップとしての価値を見逃すことなく、正しい処理で安全・合法にリサイクルすることが重要です。
まとめ:リサイクルは「回す技術」だけでなく「守る意識」が大事
金属リサイクルの現場は、単にモノを壊して回すだけではありません。
ときに有害なものを適切に扱い、「未来にリスクを残さない処理」が求められます。
使用済み有害機器をただのゴミとしてではなく、慎重に扱うべき“要注意資源”として見ることが、プロの責任なのです。
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