【古物商】スクラップ業界における盗難品の買取と流通防止に関するガイドライン
第1版
2024年1月更新
盗難品の買取停止は、盗品が市場に流通することを防止し、犯罪の利益を減少させるための措置です。
これにより、盗難品を売買することで犯罪が助長されるリスクを軽減することが期待され、買取業者や問屋などが協力して、盗難品の買取を制限する内容です。
また、警察機関や各種機関と連携して盗難品の特定や追跡に協力することも重要です。
この記事は神田重量金属株式会社が運営する「金属リサイクルブログ」やグループ企業にて検討を深めてきました。
一般の方や企業などの資産や資源を守ることにもつながり、社会課題である盗難品の流通を防止するために、金属リサイクルの中心ドライバーとして、独自ガイドラインを公開致します。
この記事は下記の内容構成になります
・【本ガイドラインの位置づけ】
・【本ガイドラインが対象とする業種】
・【第1章】古物商に基づいたガイドライン
≫① 身分証の確認を徹底する【チェックリスト作成】
≫② 支払条件と身分証の提示義務を紐づけを事前に伝える
≫③ 少額仕入れの古物記録義務ついて
≫④ 金属スクラップ以外の記載事項が不要になるケース
≫⑤ 悪質な古物法逃れのケース
≫⑥ 犯罪対策を適切に履行するには該当しない場合でも古物商のルールを念頭にする
・【第2章】盗品がお持込された場合のガイドライン
≫① 盗品の疑いがあるアイテムの入荷があった場合、速やかに警察に共有
≫② 古物台帳の記載ポイント
≫③ 古物台帳のプライバシー対策について
・【第3章】盗品流通防止宣言に関するガイドライン
≫盗難品防止に関する3つの適正ルール
≫神田重量金属株式会社と関連グループでは全て宣言しています。
・お問合せフォーム
盗難防止・犯罪防止に関する内容はコチラ
【本ガイドラインの位置づけ】
このガイドラインは、神田重量金属株式会社を含むグループ各社のガイドラインです。
同業他社などから、適切に公表・宣言をしてほしいという要望があり、一般資料としてウェブサイトにて公開致します。
社名無しでPDFでのフリーダウンロードも予定しておりますので、お気軽にご利用ください。
ご意見等がございましたら、下記の問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。
【本ガイドラインが対象とする業種】
金属スクラップ業やリサイクルショップなどを運営する業者でも適切に情報共有を行っている内容です。
法律で定められた内容も含みますが、それだけでは本質的に企業責任が果たせないため、より具体的で実務を含めて活用頂ける内容となっております。
【第1章】古物商に基づいたガイドライン
① 身分証の確認を徹底する【チェックリスト作成】
金属の買取業者は、身分証の確認・コピー・台帳作成が必要になっておりますが、実情は免許証の確認すら取らない業者が多く存在します。
最近ではインボイスで古物適用をするために、最低限の免許証の確認をする業者は増えましたが、具体的かつ実用的に実施されている例は少ないと思われます。
実際に活用されているチェックリストは下記の通りとなります。
1 | 免許証の有効期限や顔写真と本人の視認チェック ▢ |
2 | 雑談程度に、どうゆう背景で売却されるかのチェック ▢ |
3 | 情報共有・盗難が合ったアイテム情報と類似していないかのチェック ▢ |
4 | 監視カメラなど防犯ハード機器の設置 ▢ |
5 | 免許証のコピーやお客様リストの作成と検索システムの導入 ▢ |
6 | プライバシーに考慮した情報設定 ▢ |
※2番の目的は、古物営業法(第十七条:帳簿)にて、三:古物の特徴、四:年齢及び特徴という定めがあります。
本ガイドラインはお客様情報やプライバシーの保護を徹底する前提があります。売買されたアイテムが盗難品の可能性があることが重要となっており、個人の情報を侵害しない仕組みで紐づける必要があり、トラブルの未然防止と迅速な解決のための方策として、運用する必要がある。
各機関から問合せや情報共有があった際に、特に確認する必要がある。また、事前に張り紙やウェブサイトなどで通知を出すなど実務的には必要である。
【具体例】
- 免許証のコピーの保管方法や管理体制など、各社の基準で内容をWEBサイトや張り紙で周知する必要がある。
- 免許証や身分確認が出来ない場合、買取を断るか確認後に支払を行うようにする。
- お客様とのコミュニケーションを図るように努める。
② 支払条件と身分証の提示義務を紐づけを事前に伝える
リサイクル・リユース業者において、お客様から買取り(支払いをする)などの場合、支払う条件に免許証の提示を事前に伝える必要がある。
これは公平な取引を行うことを目的に、降ろしてから「聞いてない」などのトラブルを避ける目的がある。
③ 少額仕入れの古物記録義務ついて
仕入れ総額が1万円(税込)の場合、法律上身分確認の記録義務はありませんが、少額取引であっても盗品の疑いがある場合などは、各判断にて通常の確認と台帳記録が必要と思われます。
④ 金属スクラップ以外の記載事項が不要になるケース
通常の再生資源・リサイクル業において関係ない内容にはなりますが、児童書は寄付やその用途から免除されています。また、大きな設備機器や船舶・航空機など、1トンを超える機械や設備は不要とされています。
⑤ 悪質な古物法逃れのケース
⑤でも記載している通り、総トン数が1トンを超える設備という部分を活用し、本体設備や付帯設備など、本体設備に付属する機器の一部分の買取だから古物に該当しない、という主張です。例えば太陽光設備の電線ケーブルは本体設備に付帯することから、該当しない旨で主張する金属買取業者がいるかもしれません。
また、金属原材料・被覆いのない古銅線類、これは古物に該当しないともされています。
⑥ 犯罪対策を適切に履行するには該当しない場合でも古物商のルールを念頭にする
盗難品の流通を防止することを目的に、現在の古物商のルールを正しく解釈し、時代に合わせて必要な内容を適切に運用する必要があります。
金属スクラップは古物商の概念では該当しない場合も多いですが、企業責任として運用を進めていく必要があると考えます。
【第2章】盗品がお持込された場合のガイドライン
① 盗品の疑いがあるアイテムの入荷があった場合、速やかに警察に共有
県外ナンバーや不自然な方が来られた、身分証の提示をしない、盗難品の可能性がある物品、この3つのうち2つ該当すれば警察への情報共有が必要です。
必ずしも盗難とは限らないですが、様々な犯罪を未然に防ぐ目的から、必要な内容になります。
② 古物台帳の記載ポイント
従来の方法(定められた方法)は下記の通りとなります。
受入の台帳(従来方式)
- 年月日
- 品名
- 古物の特徴(備考)
- 数量(㎏数・個数)
- 住所
- 身分確認の方法とチェック欄
受入の台帳(盗難流通防止ガイドライン方式)
- 年月日
- 品名
- 古物の特徴(備考)
- 数量(㎏数・個数)
- 住所・性別・生年月日・免許証の有効期限
- 身分確認の方法とチェック欄
- お客様の業種・属性
- 免許証番号登録
- 上記内容を電子上で記録を行い、検索機能を付ける
また、上記内容は記録日より3年間の保存義務がありますが、このガイドラインでは持込み日より7年間としています。
これは盗難(窃盗)の時効が7年であるため、犯罪行為が成立している期間は各種機関への共有が必要であると考えています。
また、保存した内容をタイムスタンプが適用された方法が最も理想出来です。※電子帳簿保存法と似た内容
③ 古物台帳のプライバシー対策について
古物台帳の保存には、プライバシー対策も重要になっています。台帳に入力する専任者の設定し、定期的にログ監査にて第三者チェックを行う必要があります。
また、古物台帳の情報は警察であっても、全て開示することはお客様のプライバシー侵害になりますので、情報の共有は必要な内容のみであることが大事です。
例えば、氏名のみで検索を行い、該当する場合には追加情報を共有する、といった流れになりますので、台帳全てを見せる、といったことは少し趣旨から外れます。
【第3章】盗品流通防止宣言に関するガイドライン
リサイクルショップや金属買取業者は、ホームページやWEBサイト、SNSや事務所での張り紙告知などを活用して、盗難品の流通を防止する宣言をすることで、盗難品の受け入れを未然に防げる可能性が高くなり、犯罪行為に加担することが無くなります。
宣言をするために必要ガイドラインの作成などが必要になり、通常の流通も減る可能性がありますが、企業としての責任は果たすべきだと考えます。
盗難品防止に関する3つの適正ルール
神田重量金属株式会社と関連グループでは全て宣言しています。
犯罪に加担しない、未然に防ぐことを念頭に、全てのグループ会社にて宣言を行っており、グループ・関連会社・その他企業と円滑に情報共有に努めています。
2019年6月よりSDGsの取組みと「神田重量金属のカーボンゼロチャレンジ2050」策定した内容にも記載しているとおり、現在も運用・継続しています。
また、「滋賀県金属買取業者一覧サイト」で公表されている盗品流通防止宣言企業一覧にも記載されています。
>>盗難品の流通を防止する企業一覧
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